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ANYCOLOR決算資料から見る世代別貢献度

実は最近Vtuberグループのにじさんじを見始めていまして、いろいろ情報収集をしたりしています。
にじさんじを運営しているANYCOLORは2022年4月に東証グロース市場に上場し、2023年6月に東証プライム市場に上場したいわゆる上場企業でもあります。
別に株なんて転がしていないのでその辺の動向はよくわからないんですけど、こういう上場企業は期ごとにいろんな会社情報を出してくれるんですよね。
ANYCOLORも先日、6月14日に2023年4月期の決算説明資料を出しています。
これを見るのがまぁ楽しいんですが、その中でもちょっとおもしろかったのが資料20ページの「デビュー年度別の収益貢献度」というやつ。
大体収益は各年、または部門別とかタイプ別で表示されている気もしますけど、にじさんじは2018年から続く老舗団体、今や所属ライバー数は150人を超える大所帯なわけで、内部で所謂世代わけなんかもあるわけです。
それに関するデータということでいろいろ考えられるな、と思ったので今回はそれをいじくりまわしたいと思います。

 

デビュー年度別収益貢献度

上図は決算資料に乗っていたグラフを書き直したものですが、FY23/4収益へのデビュー年度別の貢献度になります。
各年度別の割合ですが、その他部分は個別のライバーの寄与へ分割しづらい収益、イベントの収益、元ID/KRライバーの収益のまとめだそうです。
割合を見ると最も割合が多いのがFY22/4(2021年5月~2022年4月)デビューのライバーの貢献度で、その次がFY19/4以前デビューのライバーとなってました。

決算資料的にはこのデータは「幅広いVtuberに収益が分散している」のを示すデータらしいんですが、これだけを見ると「19年度以前と22年度が一番活躍してるってことで、むしろ偏りを示していないか?」という気もします。

 

ライバー人数・活動期間を考慮した寄与度

しかしここで勘案しなければならないのは各括りに所属するライバーの数がかなり異なるという点。
上の円グラフは先ほどの資料にあった各区分けに該当するライバーの数と全体に対する割合を示したもの。
19年度以前の括りのライバーは所謂1期生~統合後の雪城真尋さんまでの61人とかなり多く他の区分と比較すると、デビューが多かった23年度の31人の倍近くになっています。
それを考えると総数としての収益の貢献度が高くなるが、ライバー一人ひとりの貢献度を推し量るには適した指標であるとは言えません。

また23年度デビューのライバー(壱百萬天原サロメさん~MECHATU-A)についてはほかの区分と異なり23年度に1年間フルでの活動をしていません。
そういう意味ではそのFY23/4収益への貢献度を図る意味では単純な人数ではなく、1年あたりの活動量として、工数などで使われる人年の単位を使った方が妥当でしょう。
例えば2022年7月デビューのVOLTACTIONは4人ユニットですが、23年度中の活動期間は9か月、そこでVOLTACTIONのFY23/4での活動人年は「4人×9か月÷12か月」で「3人年」と換算できます。

これらを踏まえて、各区分の人年を計算し、人年あたりの貢献度を計算したのが上表・図になりました。
23年度デビューのライバー数自体は31人でしたが人年に換算すると12.8人年程度となりました。
貢献度/人年を見ると、22年度デビューグループが1.04と他のグループに対してダブルスコアの値になっています。
それに次いで20年度が0.59、23年度が0.55、19年度が0.43、21年度が0.17といった具合になっています。
こうした見方をすると元データでは少なく見えた20年度、23年度の貢献度がそんな低くないことが見えてきます。

 

データを見ての所感

データを計算してまとめたら、今度は「何でこうなっているのか?」と考えるステップです。
まず大きな数値で言うと22年度グループが何故ここまで貢献度で飛びぬけているのか?が気になります。
そこでこの括りに収まるライバーを調べると、JPで言うとエデン組とRanunculusがここに含まれ、ENではLazulight~Noctyxの4グループがここに含まれます。
にじさんじENについては22年度の決算資料では今後の成長戦略の3本柱の一つに数えられる根幹とされていたり、YouTubeの再生時間や売上高でも急成長を見せていたのが報告されていたので、やはり現状でもこのENの22年度デビューグループの貢献度がかなり高い位ということかもしれません。
23年度の資料では売上高推移もにじさんじとNIJISANJI ENを分けて紹介しており、注目度著言うか重要度は依然として高そう。
別の指標でみても、22年度デビューのENメンバーの平均チャンネル登録者数は67万人、同時期のJPだと28万人と差がありますし、特にLuxiemは100万人越えが3人いる化け物グループではあるので妥当というか。
そういう意味ではJP勢とEN勢をそれぞれ別換算したデータも提示してほしいところでもあります。

また逆の数値として21年度デビューグループがなぜこうも低いのか?というのも気になります。
元々デビュー人数が少ないグループでもありましたが、人年あたりの貢献度でも他のグループと比較して低い状態です。
行ってみれば22年以降のようなENぜいの加入が全然なかった時期であることが関係していないとは言えないでしょうけども。

これに対して今外部の人間で手に入りうる指標はチャンネル登録者数でしょう。
上表は現在(2023年6月15日)時点でのチャンネル登録者数を10万ごとにわけて件数を調べたものになっています。
チャンネル開始からの時間が比較的短い23年度組を除けばおおよそが20~60万人規模を中心とした分布になっているように見えます。
その中で21年度グループは最多の登録者数でも40万人台(周央サンゴ47万人、西園チグサ48万人)となっており、50万人台以上のライバーがいない状態にあります。
ここで一つの仮説として挙がるのが、チャンネル登録者数50万人台以上のライバーの数が収益に大きく影響しているという可能性です。

 

上図は各グループについてライバーの総数/50万人以上のライバー数/50人未満のライバー数を横軸に、縦軸を貢献度に取った散布図で、
1次近似の直線とその直線の決定係数R2を併記しています。
いずれの場合も直線は右肩上がりになっているので、その条件でもライバー数が増えるほど貢献度が高くなる傾向にあるのは確かですが、
その傾向が最も高い=R2が高くなっているのは「50万人以上のライバー数」(R2=0.8985)のプロットになりました。
実際のプロットを見ても50万人以上のグラフでは直線からのプロットのはずれが小さい傾向が見えます。

決算資料の別ページを見てみると、売上の大半はコマースつまりはグッズなどの売り上げが占めています。
もちろんグッズには原価等々かかるのでそのまま収益になっているとは限りませんが、それでも大部分を占めていると仮定すると、
チャンネル登録者数50万人以上のライバーほどグッズ化回数や売り上げが高く、収益に大きく貢献しているという可能性はあるかもしれません。

同じく決算資料には収益貢献度上位100ライバーに対する収益比率と累積収益比率のグラフなんかもありましたが、
こちらで集計したチャンネル登録者数のデータによれば当落者数50万人以上となるライバーは45人で全体の28%、
収益貢献上位45人のライバーの累積収益比率が約60%というようになっています。
このような結果からみてもそういった登録者数に対する収益貢献度の関係性から、年代別の貢献度の差につながっているのではないかと考えられます。

とはいえこの差というのが登録者数がANYCOLORの売り上げに直接影響する要素なのか、それともグッズ販売や企業案件・イベントなどでのライバー起用の際に登録者数を参考に振り分けている(登録者数が多いライバーにより振り分けている)といったものによるものなのかは判断がつかないところではあります。
例えば前者であれば各ライバーが登録者数を伸ばすことがANYCOLORの収益向上に大いに役立ちますが、
後者の場合は収益自体はANYCOLORの営業努力に依存しているため、全体の収益には影響しない可能性もあったりしますが。

まとめ

  • 人年あたりの収益貢献度では、FY22/4のライバーがダントツで高い
  • 貢献度と登録者数50万人以上のライバー数には強い正の相関が見られる

ANYCOLORの決算資料については22年と23年で乗っている情報が変わったり増えていたりしているので来年も面白いデータを出してほしいところです。